消えた息子①

息子が小学4年生の夏休み、友達に誘われて夏期講習を受けることになった。

誘ってもらった時は値段も高いし迷っていたのだが、最初の説明の時に受けたテストが思ったほどよくなかったこと、それでも「地頭はいい!」と褒められた(?)こと、紹介割引があったこと。

あとは先生との面談でそろそろ勉強に力を入れないといけないような気がして申し込むことにした。

 

その帰り、停めていたパーキングから車を出そうとして財布を見たら万札しか入ってなかった。

面談でテンションの上がっていた私は、“息子にお金をくずしてくる”というお使いをさせることにした。

 

「ここをまっすぐ行ったらコンビニがあるからこの1万円でジュースを買ってきて」

と頼んだ。

息子はジュースが飲めると喜んだ。

「ジュースは家まで我慢だよ。おつりはビニール袋に入れてもらってね。」

と付け加えた。

息子は軽い足取りで走って行った。

 

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それから20分車で待った。

・・・息子が戻ってこない。

 

心配になってコンビニに迎えに行った。

・・・息子がいない。

 

店員さんに、小学生の男の子が万札持って来なかったか聞いた。

「モウカイリマスタ。」(中国の方?)



『じゃあ、どこかで入れ違いになってパーキングに戻ったのかな?』

と思ってまた戻ってみることにした。

だんだん胸がザワザワしてきた。

 

・・・やっぱりパーキング(地図の)にもいない。

 

 

『迷子になってしまった…。』

やっと、そこで気がついた。

もう小学4年生だし、生まれてからずっと住んでいる街だし、パーキングからコンビニまで200m位だし…と、息子が迷子になるなんて微塵も思っていなかった。

でもよく考えれば、私が行かせたコンビニ(地図の)は五差路になってるところにあった。

きっと、店を出て戻る道を間違えてしまったのだろう。

 

コンビニに探しに行った時にお金はくずしておいたので、車を出して自分の会社に向かった。

会社はコンビニから割と近くにあって、コンビニを出てすぐ左の細い道に曲がってしまっていれば会社に辿り着くので『会社で待っていてくれれば…』と願った。(地図の

 

慌てて会社に戻り、事務員さんに

「うちの息子来てないですか?」

と聞いた。(職場は事務さんがロックを外さないと入れないので)

「いや、来てないですよ…。何かありました?」

と聞いてくれたので、息子がいなくなってしまったことを話した。

「もしかして自宅に戻ってるのかも!」

とのアドバイスで、同じマンションに住むママ友にエントランス(オートロックで入れないので)と、念の為自宅を見てもらった。

でもママ友からは。

「エントランスや建物の周りも見たけどいない…。ピンポンならしても不在だったよ…。」

との返事。

そうこうしてるうちに後輩達が、

「私達、自転車で探しに行ってきます!」

と言ってくれた。

私は車で、さっき行った塾や、もう一度自宅を見に行くことにした。

 

その間も不安で仕方がなかった。

一番の心配が、お釣りを中身が丸見えのビニール袋に入れさせてしまったこと。

1万円のお釣りだから、お札が何枚か入っている。

もし、目先のお金が欲しい悪い人がいたら狙われてしまうかもしれない。

もし、息子が抵抗したらなにかされてしまうかもしれない。

もし、大人が数人いれば誘拐なんて一瞬でできてしまうかもしれない。

もし、面倒になったら殺すことなんて一瞬でできてしまうかもしれない。

もしかしたら、息子は今ひどいことをされているかもしれない…。

人間の(私の?)想像力は恐ろしいもので、悪い方に考え始めたら最悪な結末まで想像してしまう。

 

 

 

市の夕方の放送が流れた。

気づけば、息子をコンビニに行かせてから2時間近く経っていた。

私は最後にもう一度そのコンビニに行き、やはり息子はいなくて途方に暮れた。

 

『警察に連絡しよう』

 

そう決めて110番した。

10分程で警察官が来てくれた。

私は警察官に聞かれるまま時系列で今までのことを話した。

話しながら、後悔が溢れて泣きそうになった。

 

そこにさっきの後輩達が来てくれた。

「やっぱりみつかりません…。」

と、申し訳なさそうに話してくれた。

 

警察官から、息子が戻るかもしれないから私は自宅で待機するように言われ、私への連絡手段を伝えている時だった。

 

「あーっ!!!」

後輩の1人が大きな声を出して踏切の方を指さした。(地図の

 

そこには顔を真っ赤にして、汗でびしょびしょになった息子が立っていた。

後輩達がいたので、泣きたいのを堪えて口をへの字にしていた。

私より先に後輩2人が駆け寄り、息子を連れてきてくれた。

息子は息を切らしながらビニール袋を大事に握っていた。

中には空っぽになったペットボトルが入っていた。

私は

「1人で行かせてごめんね…。」

と謝った。

息子は下を向きながら

「ちょっと道を間違えただけだから。」

と言った。

 

 私も、息子もこれ以上話したら泣いてしまいそうだった。

警察官と後輩達にお礼を言い、久しぶりに手をつないで車まで歩いた。

 

 《次に続く》

 


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 最初にいた駐車場

 お金をくずしにいったコンビニ

 私の会社へ向かう道

 迷った息子が向かった道

 息子の発見場所

 

《*地図載せても地元の人でもわかりづらいと思います…。すみません。》