後輩にいろんな意味で面白い子がいる(後輩A)。
40歳、元美容師さんでシングルマザー。
三姉妹のお母さん。
酒好き。破天荒。勉強が苦手。
一般常識をあまり知らない。
入社して間もない頃、企業宛の郵便物を出す時、
『そこに住所あるから、郵便番号読み上げて!』
ってお願いしたら、
『350-1200(さんびゃくごじゅうひくせんにひゃく)』
と読み上げた。
気を取り直して、
『会社名の後に御中って書いてね!』
と言ったら、
『ウオンチュウ(want you)?スペルが…』
と言ったツワモノ。
ある日、その後輩Aに、
『娘が超バカなんですけどいい塾ないですか?』
と聞かれた。
自分の娘を『バカ』という後輩に怒りを覚えたが、
『成績はどんな感じなの?定期テストは?』
と返すと、
『“1”とかあります!テストは見てないです!』
とぬかしやがった。
『それってヤバくない?』
と私が言うと、
『そうなんですよ!〇〇(娘)ヤバくって!』
と言う後輩。
『ヤバいのはあなたですからっ!』
と、叫んでしまった。
ちょうど息子が通っていた塾で、学校の授業についていけない子を対象に“平均点を目指すコース”ができたので紹介した。
ただ、紹介するには責任もあるし、まず娘さんに会って話を聞くことにした。
娘さんは、当時中学3年生。
受け答えもきちんとしたきれいな子だった。
話している分には賢そうにも見える。
でも、定期テストは全て30点以下。
通知表は1と2のみ。
息子が通っていた塾で体験をして
『こんなにわかりやすく教わったのは初めて!』
と喜んでいたが、距離が遠く通うのが困難と諦めた。
それから自宅から通える塾を探した。
いくつか当たったが集団塾は断られた。
個別塾で入塾可能なとこを見つけたが、料金が高い。
精一杯の金額で英語と数学だけ受けることにした。
ただその塾から進学の見込める高校として挙げられたのは普通高校ではなく、不登校の子が進むような単位制の高校か専門学校だった。
娘さんは成績は悪かったが、毎日真面目に通学して部活もやっていた。
そしてみんなと同じ普通高校への進学を望んでいた。
まだ9カ月ある!乗りかかった船だ!応援したい!
と思った。
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公立高校に落ちて滑り止めの私立高校に行った息子。
燃え尽きてしまったように勉強量が激減。
勉強に関しては定期テストと小テストの対策だけ。
自分の中で『学校で上位20%以内ならよし』と思っているようだった。
そのせいが定期テストだけよくて模試は散々な結果。
部活も幽霊部員で、帰ってきたらゲーム三昧。
高みを目指して、勉強することがなくなった。
それでも進学した高校がとても合っていたようで、
『この学校に進学できてよかった!』
と言うので、親としては学校生活が充実してることは安心。
でも、先々を考えるとちょっと不安…みたいな感じだった。
そんな息子に
『中3の女の子の勉強を見てあげてくれない?』
と断りを覚悟で、今までの経緯を交えて聞いてみた。
受験生に関わることでいい方向に行けば…と思った。
『自信はないけど、やってみようかな。』
思いのほか前向きに、快諾してくれた。
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そんな感じで週末に勉強をみるようになった。
娘さんの学力は、おそらく小3くらいで躓いて、放置されてる感じだった。
たし算とかけ算混合の問題で、かけ算を先に計算することも知らなかった。
ただ、きれいではないけど、さらさらと迷いなく字を書く様子に、
『もしかして本来は普通にできる子なのかも…』
と思った。
国語は私が教えて、それ以外は息子が見た。
息子は、わからない子にどういえば伝わるのかと、
『えっと、なんて言えばいいのかな…』
と試行錯誤し、時には図に書いて見せて教えていた。
正直、教えるのは上手とは言えないが、定期テストの取り組み方、暗記の仕方、内申の上げ方など、自分も苦労して改善した話はきちんと伝えていた。
それから数ヶ月経ち、私に病気が見つかり。
一緒に勉強できなくなったけど、その頃には勉強の習慣ができて。
定期テストも少し上がり、国語だけは60点以上取れるようになった。
そうして、偏差値30/内申20なかった子が偏差値43の高校を受験した。
塾や学校の先生から『厳しい』と言われての受験。
結果は289点で合格!
(500点中200点取れれば合格と言われいた。)
その後、中学時代は100人中98番とかだった成績も、高校では真ん中くらいに。
自己肯定感も上がったらしい。
ここで終わっていればハッピーエンドなんだけど。
その後、次女と三女の勉強も見てほしいと頼まれる。
〜④へつづく〜