男の子のお母さん

突如、妹(42歳)が…、

「世の中の男の子のお母さんてさぁ…」

と、言ってきた。

「な…、何?」

と、ドキドキしながら聞いた。

 

「旦那さんのこと大好きだよね!(怒)」

 

…ズコーッ!(-_-)

 

(「まあ、好きだけどさー。女の子のお母さんだってそうでしょ。」)

と思ったけど言わなかった。

 

妹は、子供が1歳になる前に離婚しているので、思うところもあったのだろう。

 

 

 

 

私にとって

「男の子のお母さんってさぁ」

という言葉、結構な破壊力を持っている。

「B型の人ってさぁ」

のそれと同じくらい。

少し構えていないといけないのだ。

妹がそんなことを言うので思い出したことがある。

 

 

 

息子が小学3年生の頃だったと思う。

いつもは、鍵っ子でひとりで留守番をしているのだが、その日はたまたま用があり私は家に戻っていた。

息子は、帰って私がいて嬉しそうにしていた。

すると、インターホンが鳴った。

映っているのは、一緒の下校班の女の子(Aちゃん)のお母さんだった。

 

「うちの娘が〇〇君(息子)にケガさせられたって言ってるんですけど。」

上品に話してはいるけれど、怒りが滲み出ていた。

 

マンションのエントランスまで降りていく間に、息子になにがあったか聞くと

「前を歩いていたAちゃんが転んでしまった。」

「自分はそんな覚えはないけど、もしかしたら少しぶつかったのかな…。」

と話してくれた。

 

私は仕事柄、相手がどんな人かほんの少し話しただけでわかる方だと思っている。

“Aちゃんのお母さん”の場合は、この先のことまで考えると「とりあえず謝る」が最善の選択だと思った。

エントランスまで降りる3分程度でそれを判断して息子には、

「とりあえず、一旦ママは謝る。でも、ママはあなたがわざと人にケガをさせるような子ではないと知っている。Aちゃんに謝ることで嫌な気持ちになるかもしれない。だから後でちゃんと話をしようね!」

と、早口で話してAちゃん親子の元へ行った。

 

エントランスに着くとAちゃん親子がいた。

お母さんはとてもきれいにされていて、Aちゃんは平日なのにデパートに売っているブランドの服を着ていた。(息子は全身西松屋

Aちゃんはずっと泣いていて、ヒザは擦りむいていた。

 

Aちゃんのお母さんは、

「男の子のお母さんだとわからないかもしれないんですけど、娘は今まで嘘をついたことがないんです。その娘が〇〇君に突き飛ばされて転んでケガをしたと言っているんです!」

と言った。Aちゃんは何も言わず泣いているだけだった。

 

私は、

「息子に確認したら、『Aちゃんは大切なお友達だからわざと押すようなことは絶対していないんだけど、後ろを歩いていたのでもしかしたら気づかないうちにぶつかってしまったのかもしれない』と言っているんです。」

「うちの子少しボーッとしたところがあるので…ほんとに申し訳ありません。Aちゃんも痛かったよね。ほんとにごめんね。」

「お洋服も、汚れてたらクリーニングに出すし、破れてたら弁償させて下さい。」

と、話した。

 

息子も

「ごめんなさい。」

と謝った。

 

Aちゃんのお母さんは

「男の子のお母さんって、皆さんすぐに謝ってくれないんですけど(…そうなの?)〇〇君のお母さんが謝ってくれてよかったです。これからも下校班で一緒なので気をつけてくれれば大丈夫です。」

と、少し笑顔になって帰っていった。

 

ツッコミどころ満載で、色々とと思うことがあったが、

「私が今気にしなければいけないのは息子だ!」

と気を取り直して真実を調べることにした。

 

息子には

「謝ってくれてありがとう。ほんとに〇〇が悪いのかちゃんと調べてくるから、その後で話をしよう。今日は特別にハーゲンダッツ食べていいよ!」

と言って、先に帰した。

 

私は、同じマンションの数少ないママ友のところに行った。

そこには、息子と同級生の女の子のBちゃんがいて下校班も同じ。

そしてBちゃんは周りをよく見ているのだ。

 

事情を話してBちゃんに聞くと

「Aちゃんねー、歩道の段になってるとこ歩いてて自分で転んだんだよ!」

と話してくれた。

 

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これ。歩車道境界ブロックというらしい。

 

「〇〇(息子)が押したんじゃないの?」

と確認すると

「〇〇(息子)は、巻き込まれて一緒に転んじゃってたよー」

と、知らない情報まで教えてくれた。

…てゆうか、息子よ、転んでたなら教えてくれよ(T_T)

 

 

家に戻り、嫌がる息子に抱きついた。

「〇〇悪くなかったよ!謝らせてごめんね!!」

「やっぱそうだった?自信なくて。」

「てゆうか、自分もケガしたなら言ってよ!」

「たいしたことないし、言うとママ会社戻れないでしょ!」

「…。(涙目)」

「ママ会社行かないと僕ゲームできないし!(笑)」

 

そんな訳で、「とにかく息子が人を傷つけたわけじゃなくてよかった!」と完結。

 

 

ちなみにママ友が近所の薬局でAちゃん母にばったり会った時に

「うちの娘が〇〇君にケガさせられた!」

と言ってきたので

「娘(Bちゃん)が見てたけど、ほんとは自分でケガしたみたいよ!」

と事実を話してくれたとか。

 

後日Aちゃん母、菓子折りを持って謝りに来てくれた。

「…そうゆうことではないんじゃないのかな。」

とモヤッとしたが、笑顔で受け取り(一度は遠慮しつつ)別れた。

そして友達にはなれないタイプだな、と思った。

…お互い様か。

 

 

私は、嘘をつく。

仕事柄、2日に1回は。

年相応だと思っても「お若いですね!」と言うし、

出されたコーヒーが普通でも「おいしい!」と言う。

 

息子だってそうだ。

年に数回しか会わない義母が作った煮物が口に合うかと聞かれれば

「おいしいよ」とほんとは苦手なのに言うし、

私の父が選んだお世辞にもセンスがいいと言えないTシャツを

「見ようによってはオシャレ」と言って受け取る。

 

 

なんとなく「うちの子は絶対嘘をつかないんです」って育てられてしまうと、辛いんじゃないのかな…と思ってしまった。

 

 

息子には

「時には嘘をつくことがあるかもしれない。でも、人を騙したり、人を傷つけたりする嘘はつかないてほしい。」

と話した。